遺言書のない相続が発生すると、相続財産の分割について話し合う「遺産分割協議」を行います。この遺産分割協議は法律に定められた行為(法律行為)です。そのため、単独での法律行為を制限された未成年者は原則として、遺産分割協議に参加することができません。
一方で、遺産分割協議の成立には、相続人全員の合意が必要です。ゆえに、相続人に未成年者がいる場合には、未成年者を法的に代理する親権者が、未成年者を代理して署名をし、協議を進めることができます。
しかし、どのような場面であっても、親権者が子を代理できるわけではありません。
こちらでは、親権者が子を代理することができない場合と、その解決策について、お伝えします。
利益相反と特別代理人
例えば、父親が亡くなり相続が発生した場合、相続人は原則として、配偶者である妻(子の母親)と、第一順位法定相続人の子となります。しかし、この相続の遺産分割において、母親が子を代理して遺産分割協議をしてしまうことは、子にとって必ずしもよい結果となるとは限りません。母親が自分の受け取り分を増やしたいがために、子にとって不利益な分配を強要してしまう可能性があります。
こうした代理する側(母親)と代理される側(子)の利益が矛盾しあう関係を「利益相反」と呼びます。利益相反関係にある一方の相続人が、他方の相続人を代理することは許されません。このような場合には、家庭裁判所に「特別代理人」の選任の申立てを行います。
特別代理人の選任
特別代理人の選任を行うには、未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所に、親権者やその他の利害関係人が申立人として、必要書類を提出します。
選任された特別代理人は、未成年者に代わり遺産分割協議に参加したり、協議書に署名したりすることのできる権限を持ちます。
静岡市内で申立てられた利益相反に伴う特別代理人の選任申立ては、静岡家庭裁判所(静岡市葵区)で判断されますが、静岡家庭裁判所では、年間300件程度の特別代理人が選任されているようです。未成年者のいる相続の進め方にお悩みの方は、ぜひ相続の専門家にご相談ください。