相続財産のなかには、名義変更をしなければ利用できなかったり、処分できなかったりする財産が存在します。名義変更のためには、遺産分割協議によって誰がその財産を受け継ぐのかを決める必要がありますが、多額の金銭が動く相続では、相続人間でトラブルが起こることも少なくなく、遺産分割協議がなかなか進まないことも珍しくありません。
遺産分割協議が難航し、名義変更に必要な遺産分割協議書が整わない場合には、家庭裁判所での調停や審判を利用する方法も考えられます。
調停による名義変更
調停を利用して遺産分割を進める場合、取り決めた内容は裁判所書記官が作成する「調停証書」にまとめられます。調停証書を遺産分割協議書の代わりに提出することで、預貯金や不動産などの名義変更の手続きを進めることができます。
金融機関で調停による名義変更を行うためには、以下のような書類が必要となります。
- 家庭裁判所の調停調書謄本
- 被相続人名義の預金通帳
- 相続する方の戸籍謄本(現在戸籍)
- 相続する方の印鑑登録証明書
金融機関によっても必要書類は異なります。各金融機関のウェブサイトなどを確認し、必要書類を事前に把握しておきましょう。
審判による名義変更
審判を利用して遺産分割を進める場合、分割は法定相続分に応じて行われます。取り決めた内容は「審判書」にまとめられます。審判書の受け取りから2週間以内は、高等裁判所への抗告期間となり、その期間内に異議申し立てがなされなければ、いかなる理由があっても、審判書の内容に従うことが義務付けられます。
金融機関で審判による名義変更を行う場合の必要書類は、調停証書謄本の代わりに審判書謄本を提出するほかは、調停による名義変更に必要な書類と代わりません。調停による手続きの場合と同様、各金融機関のウェブサイトなどを確認し、必要書類を事前に把握しておきましょう。