遺言書の作成を検討する際、どのように遺言書を残すのかを決めなければなりません。遺言書の方式は、一般的に、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」から選ぶことになります。
それぞれの方式にメリット・デメリットがありますので、それぞれ比較したうえで、ご自身のニーズに最も適した遺言方式を選択しましょう。
ご自身で作成する遺言:「自筆証書遺言」
自筆証書遺言は、遺言者本人が、全文・日付・氏名を自筆で記入したうえで、実印を押印して作成する遺言書です。記載する財産の一覧(財産目録)については必ずしも自筆である必要はなく、代理の方がパソコンで作成した目録や、通帳のコピーであっても、有効な財産目録として認められます。
自筆証書遺言のメリット
- 作成が簡単
- 作成時の費用が不要
- 家族や第三者に遺言書の内容や存在を秘密にできる
自筆証書遺言のデメリット
- 方式不備が死後に発覚し、無効となるリスクが高い
- 第三者による紛失・改ざんのおそれがある
- 遺言書を見つけてもらえない場合がある
- 相続人は家庭裁判所での検認を得なければ開封できない
自筆証書遺言のデメリットを解消するための制度として、2020年度から、法務局での遺言書保管制度が始まっています。
法務局での遺言書保管制度を利用する場合には、家庭裁判所での検認が不要となります。
しかし、制度の利用には法務局への本人の出頭など様々な要件が課されており、その手間は家庭裁判所での検認手続きとさほど変わりません。くわえて、遺言書の内容に関するチェックをしてもらえるわけではありません。
確実な遺言書を残し、相続人にも確実に伝えるためには、以下の公正証書遺言との比較も必要でしょう。
公証人が内容と存在を証明する遺言:「公正証書遺言」
公正証書遺言は、遺言者の口述内容をもとに公証人が作成する遺言書です。
公正証書遺言は公証人のいる公証役場での作成が原則ですが、老齢や病気のために出向くことが困難な場合には、公証人が出張して作成することも可能です。
公正証書遺言のメリット
- 方式不備による無効のリスクが低い
- 原本が公証役場で保管されるため、紛失・改ざんのおそれがない
- 家庭裁判所での検認が不要
公正証書遺言のデメリット
- 作成に費用がかかる
- 証人2名以上の用意・立会いが必要
- 遺言書の内容を公証人と証人に知られてしまう
公正証書遺言の作成で懸念されるのは、証人を用意しなければならないことと、遺言の内容を知られてしまうことでしょう。
公証人は法律実務に通じた第三者ですので、遺言の内容を知られてしまってもあまり問題はありません。一方で、証人として無関係な第三者を用意するのは難しく、だからといって友人や家族を証人としたために遺言の内容を知人に知られてしまうことも不安かと思います。
公正証書遺言を作成される際には、前段の財産調査等といっしょに、証人についても、専門家にお願いすることもご検討ください。
公証人が存在だけを証明する遺言:「秘密証書遺言」
秘密証書遺言は、遺言者が作成し、封緘・押印したうえで、公証役場で遺言者と証人が署名を行う遺言書です。
秘密証書遺言で作成するメリット
- 遺言の内容を第三者に知られずに作成できる
秘密証書遺言で作成するデメリット
- 作成に費用がかかる
- 証人2名以上の用意・立会いが必要
- 方式不備による無効のリスクが高い
- 自分で遺言書を保管しなければならない。
- 家庭裁判所での検認が不要
秘密証書遺言では、公証役場に記録されるのは作成した事実のみであり、内容については一切知られることはありません。一方で、メリットに対して、デメリットが多いように、秘密証書遺言については、ほとんど作成されていない現状にあります。
以上のように、遺言書には一般的には3つの方式がありますが、実質的に検討すべきは自筆証書遺言か公正証書遺言の2つとなるでしょう。確実な遺言書を残すためにも、方式不備による無効のリスクの低い公正証書遺言をおすすめいたします。