遺言書は、故人の最後の意思を示すものとして、ご自身の財産について、「何を」「誰に」「どのように」帰属させるのかを比較的自由に指定することのできる法的な書面です。
しかしながら、遺言書を作成したのはいいものの、財産の変更や取得者(受遺者)の変更など、記載内容に変更を加えたい場合や、遺言書そのものの取消しを検討することもあるかもしれません。
このような、「遺言書の変更・撤回」についてご説明いたします。
遺言書の内容に変更を加えたい
作成した遺言書が自筆証書遺言である場合、以下の手順で変更を加えることができます。
- 変更したい記載箇所に二重線を引く
- 二重線の上に押印する
- 変更箇所の近くに変更したい新たな文言を記載する
- 「〇行目・〇字削除・〇字加入」と欄外に記載・署名し、変更箇所を明らかにする
また、公正証書遺言や秘密証書遺言など、公証役場での作成・確認が必要な遺言書については、公正証書での遺言書の作り直しが必要となります。
遺言書そのものを撤回したい
作成した遺言書が自分の手元にしかない場合、作成済みの遺言書を破棄することで、撤回したものとみなされます。
しかし、公証役場に原本が保管される公正証書遺言や、法務局保管制度を利用している自筆証書遺言など、手元以外に遺言書がある場合、破棄しただけでは撤回できなかったり、そもそも破棄できなかったりします。
法務局保管の遺言書については、身分証を持参し、法務局に撤回書を提出することで撤回することができますが、公正証書遺言については、公証役場に赴き、作成時と同様、証人2名の前で、撤回する旨の申述を行う必要があります。
以上が、遺言書の変更・撤回の手続きとなりますが、遺言書の作成後に遺言内容に抵触する行為をしたり(「相続させる」とした不動産を売却する)、作成した遺言書と矛盾する新しい遺言書を作成したり(古い遺言で「長男に相続させる」としたが、「長女に相続させる」とする新しい遺言を残す)と、事実上の変更・撤回とみなされる行為もあります。
このように、遺言書の変更・撤回は可能ですが、相続の場面で遺言書があっても無駄になる場面はほとんどありません。可能な限り遺言書は撤回せず、新たな遺言を作成することをおすすめいたします。