身近な方がお亡くなりになったあと、自筆の遺言が見つかった場合、封がされている遺言書は勝手に開封してはいけません。
遺言者が自筆で遺した遺言は「自筆証書遺言」と呼ばれ、自筆証書遺言の開封にあたっては、家庭裁判所にて遺言書の検認の手続きを経なければなりません。検認を経ずに勝手に開封してしまった場合、5万円以下の過料が課せられる場合もありますので、注意が必要です。
なお、2020年より、法務局の遺言書保管所において自筆証書遺言を補完する自筆証書遺言書保管制度が開始されています。法務局に保管されている遺言書については検認手続きが不要です。遺品のなかに遺言書が見つからない場合にも、法務局保管所に保管されていないか調査してみると良いでしょう。
自筆証書遺言の検認
自筆証書は遺言者が自ら記す遺言書ですから、作成も簡単です。しかし、作成した遺言書をそのまま自宅で保管してしまうなど、保管環境の整っていない場所に遺言書を保管してしまうと、遺言書が改変されてしまうリスクもあります。
このリスクを回避するために、法律で自筆証書遺言書の開封を禁止し、検認手続きを設けることで、その開封を家庭裁判所に委ねています。つまり、検認とは、自筆証書遺言書の偽造・変造を防止するための制度です。
なお、検認はあくまで、遺言書の偽造・変造防止のための措置ですから、遺言の有効性を保証するものではありません。
自筆証書遺言書に法律上の遺言書の要件を満たさないリスクは付き物ですが、遺言書が要件を満たしているかどうかが不安な方は専門家へのご相談もご検討ください。
検認手続きの流れ
- 遺言書発見者は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ遺言書検認の申立てを行います。
- 相続人は、裁判所から指定された検認期日に、封をしたままの自筆証書遺言書を家庭裁判所に持参します。
- 相続人立会いのもと、裁判官が遺言書を開封し、遺言書の形状や日付、署名を明らかにします。
- 検認後、相続人は、遺言の執行のために必要な検認済証明書の取得申請を行うことができます。
以上のように、自筆証書遺言は遺言者が自ら作成するために法律上の要件を満たさないリスクが常にあるほか、検認手続きにも時間がかかってしまいます。これから遺言書を作成しようとお考えの方は、検認が不要の公正証書遺言の作成もご検討ください。