国民の4人に1人が65歳以上の高齢者であり、600万人を超える認知症患者を抱える日本。そうした社会状況を背景に、高齢化に伴う課題に柔軟に対応することのできる制度として、家族信託への期待が高まりつつあります。
家族信託とは、文字通り、家族を信じて財産管理を託す契約です。
こちらでは、家族信託の重要キーマン【受託者】についてご説明いたします。
家族信託における受託者
受託者とは、委託者から託された財産の管理・運営・処分の権限を有する人のことを言います。受託者は、管理・運営・処分の権限を有するうえで、以下の義務を負います。
・善管注意義務
委託者から託された財産を善良な管理者としての注意をもって管理する義務
・忠実義務
受益者のために、受託者としての役割を忠実に果たす義務
・分別管理義務
託された信託財産と受託者個人の財産とを分けて管理する義務
受託者には、特別な資格は要件とされていませんので、未成年者や被後見人、被保佐人等、法律上判断能力が十分でない方を除き、誰でも務めることができます。しかし、受託者は、他人の財産を管理・運営・処分することのできる強力な権限を持ちます。そのためにも、受託者には信頼できる人物を選ぶことが不可欠です。
「家族」信託ではありますが、受託者として選任できるのは家族に限られません。近年では、士業などの法律の専門家や社団法人などを受託者とする信託契約も増えつつあります。
受託者の死亡と信託の終了
信託契約は、委託者の死亡によっては当然には終了しませんが、受託者が死亡すると、原則として契約も終了します。受託者の選任は個人間の信頼関係に基づくものですので、承継されることはありません。
なお、受託者として選任した方が亡くなった場合でも、信託契約を終了させたくない場合には、「二次受託者」を事前に定めておくことが出来ます。二次受託者を定めておくことで、受託者が死亡しても、その地位を引き継ぐことが出来ます。
そのほか、受託者が被後見人になってしまった場合にも信託は終了します。
受託者は原則として辞任することができず、やむを得ない事由によって辞任する場合にも裁判所による許可が必要となるなど、大きな責任を有する立場です。受託者を選任する際は、契約内容を慎重に検討することが不可欠です。