国民の4人に1人が65歳以上の高齢者であり、600万人を超える認知症患者を抱える日本。そうした社会状況を背景に、高齢化に伴う課題に柔軟に対応することのできる制度として、家族信託への期待が高まりつつあります。
家族信託とは、文字通り、家族を信じて財産管理を託す契約です。
こちらでは、家族信託の重要キーワード【信託財産】についてご説明いたします。
家族信託における信託財産
信託財産とは、財産の所有者である委託者が、その財産を管理する受託者に託す財産のことを言います。信託財産の範囲は広く、宝飾品などの動産から、預貯金などの金融資産、土地・建物などの不動産に至るまで、金銭的価値のあるものであれば、自由に設定することが出来ます。
信託財産は誰のもの?
信託財産の本来の所有者は当然委託者です。しかし、家族信託は、委託者本人が所有権を有するために起こりえるトラブルを回避するための制度でもあります。そのため、委託者が信託した財産は形式上、その財産を管理する「受託者」の所有物になりますが、その受託者も自由に信託財産を使用・処分できるわけではありません。信託された財産の実質的な所有権は委託者でも受託者でもなく、「信託財産」という独立した財産から利益を受ける「受益者」に帰属します。
実質的な所有権は信託財産から利益を受ける「受益者」に帰属しますが、形式的な所有者は信託財産を管理・運営する受託者です。信託事務の都合上、不動産の登記名義人や株主名簿に記載される株主名義を、受託者に書き換える必要があります。
預金の信託に注意!
先程述べたように、不動産や株式については、名義を形式的な所有者である受託者に書き換える必要があります。しかし、預貯金の実質的な内容である「預貯金債権」という債権については、通常、金融機関との契約上、他人に譲渡することが禁止されていますので、口座名義を受託者に変更することが出来ません。
預金を信託する場合には、以下のような流れで行います。
委託者と受託者の名義で、信託財産の管理用口座(信託口口座)を開設する。
委託者の預金口座から現金を引き出し、信託口口座に移す。
預金信託を開始する。
信託口口座の開設は、家族信託の必須要件ではありませんが、受託者には分別管理義務が課せられているため、「受託財産用の信託用口座」と「受託者本人の個人口座」とは区別しておくことが得策です。
なお、金融機関によっては、信託口口座の開設を受け付けていない場合もありますので、預金の信託を検討される場合には、事前に各金融機関に確認しておきましょう。