納税すべき相続税額を確定させる前段階として、相続財産の評価を行う必要があります。財産評価を誤って算出してしまうと、納税額に齟齬が生まれてしまうリスクがあります。
さらには、本来納税すべき相続税額よりも少ない額で評価額を算出し、その評価に基づいて納税してしまうと、過少申告へのペナルティとして納税額が加算されてしまうかもしれません。
こちらでは、相続財産のうち、【農地・生産緑地・山林】の評価についてご説明いたします。
農地の評価
農地については、農地法等の法令により、宅地に転用することが原則として制限されていますので、通常の土地と比べ、所有者の使用に大きな制限がかかります。そのため、農地は通常の土地よりも低い評価額が設定されていますが、評価方法は農地の種類によって異なります。農地の種類と評価方法については以下の通りです。
- 純農地 :倍率方式による算出(固定資産税評価額×倍率)
- 中間農地 :倍率方式による算出(固定資産税評価額×倍率)
- 市街地農地 :宅地比準方式※又は倍率方式による算出
- 市街地周辺農地:市街地農地評価額の80%
※宅地比準方式とは、宅地として利用されるのであれば効用が最大に発揮される農地・山林について、周辺の宅地と比較して評価する方法を言います。具体的には、農地が宅地であるとした場合の価額から宅地造成費を控除した価額が評価額として用いられます。
宅地造成費は、土地の区分によるほか、都道府県によっても異なります。参考までに、静岡市 葵区、清水区、藤枝市、焼津市県での令和4年分の宅地造成費は、平坦地については700円~74,400円/㎡、傾斜地については、18,700円~57,700円/㎡で設定されています。
生産緑地の評価
生産緑地とは、生産緑地法に基づいて指定される、市街化区域内にある土地や山林を言います。生産緑地は、指定から30年が経過すると、市町村長に対して買取の申し出をすることができますが、この買取の申し出の可否(=指定から30年以内か否か)によって、評価方法は異なります。
買取の申立てができる生産緑地の評価
(その土地が生産緑地でないものとした場合の評価額)×95%
買取の申し出ができない生産緑地の評価
(その土地が生産緑地でないものとした場合の評価額)×(1-控除割合)
指定から30年が経過することで、法律上、市町村長に対する生産緑地の買取の申し出をすることが可能となりますが、実際は宅地化されるなど、買取が行われていないのが実状です。
静岡市 葵区、清水区、藤枝市、焼津市県内では、静岡市 葵区、清水区、藤枝市、焼津市市が2035年(令和17年)、浜松市が2037年(令和19年)に政令指定都市への指定から30年をむかえ、政令指定都市への指定を契機として一斉になされた生産緑地の制限が解除されます。
生産緑地の制限が解除され、宅地化されると、多くの土地が売却され、土地の供給過剰のために土地の価格が暴落することが懸念されます。
静岡市 葵区、清水区、藤枝市、焼津市県内で所有している土地が生産緑地に指定されている場合には、事前の対策が不可欠です。
山林の評価
山林は、法律上、「耕作の方法によらないで竹木の生育する土地」と定義されます(不動産登記事務取扱手続準則第68条)。山林は、その状況によって区分され、区分ごとに評価されます。山林の区分と評価方法については以下の通りです。
- 純山林 :倍率方式による算出(固定資産税評価額×倍率)
- 中間山林 :倍率方式による算出(固定資産税評価額×倍率)
- 市街地山林:宅地比準方式※又は倍率方式による算出
※広大な市街地山林については、広大地の評価方法に準じて算出 - 保安林等土地利用に制限のある土地:自用地としての評価額から一定の金額を控除
宅地として利用されていない土地は、法律上の制限が付されているものも多く、物理的にも境界が不明瞭なものも少なくありません。
農地や生産緑地、山林の評価にあたっては、土地家屋調査士や税理士といった財産評価の専門家に相談されることをおすすめいたします。
なお、静岡あおい相続遺言相談室では税理士の独占業務についてはパートナーの税理士が担当しております。専門家と連携をしてワンストップでお客様のお手伝いをさせていただいておりますのでお気軽にご相談ください。